2014 年 29 巻 2 号 p. 261-276
コモンズの「過少利用」では,直接的な資源利用が減少したことで,景観や季節感の喪失,生物相の変化,災害防止機能の低下といった,自然資源の総体(生態系)としての機能低下が問題視されている.本稿では,森林・河川・農地の過少利用の事例をとりあげ,「生態系サービス」という観点から問題の特徴を分析した.その結果,コモンズに期待される受益は,物質資源を供給するサービスから,レクリエーションや景観といった文化的サービス,気候や災害制御といった調節的サービスへと重点が移っていた.期待されるサービスの変化にともない,ステークホルダーの拡張がみられた.