国際保健医療
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原著
ラオス山岳少数民族の親がとらえている子供の病いに関する調査
小林 勉山本 秀樹
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2008 年 23 巻 3 号 p. 181-190

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抄録

目的
 ラオス北部は山がちで、少数民族が多く居住し、地理的文化的な理由から開発の遅れが目立つ。彼らを取り巻く独特な生活環境、自然環境の中で、特に子どもたちの健康について少数民族の人々が、どのように認識しているのか調査した。
方法
 ラオス北部 C村に住むカムー族について、参与観察を行い、生活様式にかかわる情報から健康に影響を及ぼすような要因について抽出し、民族学的な視点から分析した。また 10歳以下の子どもを持つ母親に、子どもがかかったことのある病気と、そのときの対処についてインタビューを行った。また、村の要職にある人たちからこの村の健康問題、すなわち環境や文化、インフラ整備などに関して同様に調査した。
結果
 村ではもち米栽培によって主食を得ていた。副食を含めて食糧は狩猟など、周囲の森に依存していた。 10歳以下の子どもを持つ母親は、子どもの病気についていくつかの症状を病気として認識し、病院に連れて行くなどの対処を行っていた。さらに子どもが日ごろ元気であれば、健康であるという認識であった。また、村の要職にある人たちも、村の健康問題について子どもたちのマラリア、寄生虫などの問題を認識していた。子どもたちはマラリアや下痢などの病いを経験していた。特定の病いの経験から住民自身で病いに関する知識を蓄積していた。
結語
 村では,近年では子どもの健康に影響するようなひどい食糧不足はなかった。家屋は、風通しよく、夏でも快適ではあるが、構造上、蚊の侵襲や屋内の煙が子どもたちの健康に影響する恐れがあった。生活と周辺環境を切り離すことができないことから、マラリア蚊への曝露や家畜の存在は健康に悪影響を及ぼしていた。
 村のキーパーソン及び村民は、現在建設中のスーパーハイウェイにより、子どもたちの健康に良い影響を与えることを期待していた。
 子どもたちの健康について、親はいくつかの病気を認識しており、病気にかかったときには病院へ連れて行っていた。子どもは日ごろ元気ですごしていれば、健康上問題はないという認識であった。

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© 2008 日本国際保健医療学会
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