The Journal of JASTRO
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小児腫瘍に対する陽子線治療の実現可能性評価
藤 浩石田 裕二村山 重行山下 晴男橋本 孝之原田 英幸朝倉 浩文古谷 和久西村 哲夫
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2008 年 20 巻 4 号 p. 143-149

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抄録

【目的】小児腫瘍の放射線治療における陽子線の有用性を知るためには,これまでの報告のように,限られた疾患だけではなく,さまざまな疾患において,同様な利点が得られるか検証する必要がある.そのため,静岡がんセンターにおいて 2003年 7 月から2008年 4 月までに陽子線治療を実施した 20歳以下のうち,中枢神経腫瘍, X線併用照射を除く 14例の治療計画データを解析した.【対象と方法】臨床標的体積(CTV)のV95%と計画標的体積(PTV)のV90%を算出し,標的体積の包括性を評価し,標的線量の均一性を知るために Dmaxを算出した.腫瘍の部位ごとに危険臓器を規定し,その臓器の線量と耐容線量を比較した.頭頸部腫瘍治療例については 14臓器,胸部腫瘍については 6 臓器,骨盤部腫瘍については 5 臓器の線量を算出した.【結果】アイソセンタ線量は 36–67.2GyEであった. CTVのV95%が95%未満となった症例が 1 例,PTVのV90%が95%未満となった症例が 3 例みられた. Dmaxは102~ 106%であった. 146臓器のうち,耐容線量を超えていたのは 21臓器で,このうち 11臓器では,腫瘍の直接浸潤があった.耐容線量を超える頻度が最も高い臓器は水晶体と下垂体であった.【結論】小児腫瘍に対する陽子線治療は,包括性と均一性の高い治療が提供できる.小児腫瘍に対する陽子線治療例において,腫瘍の直接浸潤がみられた臓器やきわめて低い耐容線量の臓器では耐容線量を超えることがあるが,多くの臓器の線量は耐容線量より低くすることが可能であった.

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© 2008 日本放射線腫瘍学会
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