2015 年 51 巻 4 号 p. 818-822
症例は9 歳男児.下腹部痛を主訴に近医受診し腸炎と診断された.しかし症状は改善せず,血液検査で強い炎症所見を認めたため精査加療目的にて当院へ紹介となった.腹部CT 検査ではS 状結腸に接した約5 cm の腫瘤を認め,感染を伴う腫瘤病変を疑い抗生剤治療を行ったが,炎症所見は改善しなかった.MRI 検査にて血腫成分を伴う腫瘍病変も疑い,単孔式腹腔鏡下手術を施行した.腫瘍は骨盤腔内に存在し,大網,腸間膜,膀胱,腹壁に軽度癒着を認めていたが,鈍的剥離のみで腫瘍を摘出した.腫瘤は5.5×5.0×3.5 cm の充実性腫瘍で,特殊染色検査および遺伝子検索からepithelioid inflammatory myofibroblastic sarcoma(EIMS)と診断された.EIMS は再発に対する補助療法の効果が少ないため,外科的治療が重要とされる腫瘍である.本症例では術後補助療法を施行せず2 年が経過しているが,再発を認めていない.今後もさらなる経過観察は必要と思われる.