感染症学雑誌
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原著
医療・介護関連肺炎ガイドラインに従った耐性菌カバーと治療アウトカムとの関連についての検討
中塚 賀也森本 千絵安田 一行辻 貴宏加持 雄介安田 武洋橋元 成修黄 文禧羽白 高田中 栄作田口 善夫
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2013 年 87 巻 6 号 p. 739-745

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抄録

【背景】医療・介護関連肺炎(Nursing and Healthcare-associated pneumonia:以下 NHCAP と略)ガイドラインでは,耐性菌保有リスクの有無により耐性菌カバーの要否を定めているが,ガイドラインに従った耐性菌カバーが生命予後の改善や治療失敗の減少をもたらすか否かは明らかではない.【目的】NHCAP ガイドラインに従った耐性菌カバーの有無が生命予後や治療失敗率に与える影響を明らかにする.【方法】当院で 2010 年 1 月 1 日から 2011 年 12 月 31 日までの間に入院した NHCAP 患者を対象として後ろ向きに情報収集し,ガイドラインに従った耐性菌カバーを行った群と行っていない群との間で生命予後や,治療失敗率を比較した.また,肺炎の重症度や患者背景などと生命予後・治療失敗との相関について検討した.【結果】計 226 入院を解析した.ガイドライン通りの耐性菌カバーを行った群と行わなかった群の間に,入院 30 日以内死亡率・入院死亡率・治療失敗率の何れにも有意差を認めなかった.Under Treatment か否か,PDR pathogen の有無,複数の基礎疾患,Performance Status,市中肺炎の重症度分類を用いて行った多変量解析では,「市中肺炎の重症度分類で重症に分類されること」のみが,生命予後や治療失敗率に有意な相関を認めた.また,耐性菌が検出された症例でも,初期治療時に該当する耐性菌をカバーする抗生剤が含まれたか否かは,生命予後や治療失敗率に相関を認めなかった.【結論】NHCAP ガイドラインに従った耐性菌カバーは生命予後の改善や治療失敗率の減少に寄与しない可能性がある.

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© 2013 社団法人 日本感染症学会
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